ユニットセットアップ・スピーカーシステムのすすめ 第3話~臨場感の再現とは(前編)~
【 ユニットセットアップ・スピーカーシステムのすすめ 】
audio union 町田店 : 西村 巧
第三話 『 臨場感の再現とは?(前編) 』
「いらっしゃいませ 木島さん!今日もレコード探しですか?」
「まぁ・・・そうね、探してる物は無かったけど別のを買っちゃった」
そう言いながら彼は袋を開けて数枚を私に見せてくれた。Jazzに混じってジョージ・ウィンストンが入っていたので
「あれ?ニューエイジ系も聴かれるんですか?」と私。
「家のが好きだからね。こんなのとか、クラシックも・・・。付き合って聴いてるよ」
「そうでしたか・・・これ、ちょっとここで聴いてみましょうよ!時間は有りますか?」
「良いよ、せっかくだから今鳴ってるスピーカーで聴かせてちょうだいよ」
「ハィ!かしこまりました」(最初からそのつもりでしたが・・・)
そう言って私はジャケットからレコード盤を取り出しターンテーブルに置き、針を下ろした。
スピーカーから繊細なピアノタッチと温かく包み込む様な余韻が溢れ、部屋中を満たした。
『 DECEMBER 』私も久しぶりに聴いた。
リスニングチェアに深く腰掛けていた木島さんだったが・・・急に身を乗り出し、私の方を振り向くと
「このピアニスト・・・こんな丁寧に弾いてたとは知らなんだ」
「彼は見かけによらず・・・なんて言っちゃあ失礼か(笑)、かなり繊細な人らしいですよ」
「別なアルバムを家で聴いた事有るけど、タッチが軽くてつまらない印象しか無かったんだよなぁ~。臨場感が違う・・・どうして家のはこんな風に鳴ってくれないんだろ?」
「木島さん!それは、ご自身の音楽性が高まったが故の贅沢な悩みですね!」
「バカを言っちゃいかんよ、年齢と共に耳は悪くなる一方さ!目や運動神経もね(笑)」
「それなら味覚も落ちて美味しい物が判らなくなっていますか?」
「舌は別だな・・・歯はだめだけど(笑)」
「でしょう!視力レベルで言う『良い目』と、対象事物の芯を捉える『見る目』が有る様に、聴覚能力の高い『良い耳』と言葉や音表現を理解する『聴く耳』も有るって事ですよ」
「そう言われりゃ そうだなぁ~。こんな俺でも感性が向上するもんなのか・・・」
「普段そこに意識が向いてないんで気付かない人は多いんですが、人間誰もが持っている能力ですから、個人差は有るでしょうが 向上することは間違いない事実でしょうね」
「う~ん、そう言う事か・・・システムが古くなったことで、音質劣化も多少は有るだろうが、それ以上に、聴く側の要求の方が高まって来たと・・・」
「はい、映像再生の分野では高画質を求めハイヴィジョンやプラズマTVが生まれた様に、行き着く先は『より自然な表現』だと思います。音楽再生とて同じ事、木島さんが仰る通り『臨場感の再現』が、求められるところです」
「さぁ~て、弱ったなぁ・・・今更オーディオ買い換えるなんて、家のには言えないし・・・何とかならんかなぁ~」
「何とかしましょう!」
そう言って私は下取買換えの見積もりを作る為、準備に取り掛かった。
今回のポイントは『臨場感が伝わる生き生きとした再現』にある。
紹介が遅くなってしまったがこの木島氏(仮名)、今年定年退職され、様々な趣味を楽しみながら、悠々自適な生活を送られている。音楽鑑賞もその中の一つだが・・・さすがは長年のオーディオマニア!自宅のオーディオシステムは何と25年~35年位前の高級品がズラリ!確かに今となっては『古い』印象も有るが、中古市場では『レアモノ』『ヴィンテージ物』扱いの高額高人気で流通している物が多かった。
そんな彼だが、最近は自宅のシステムに不満を感じ始めていた様で、レコード探しついでに必ずと言って良い程 当コーナーにも立ち寄って再生音を確認していたのだ。
「いやぁ~木島さん、凄いシステム・・・揃えも揃えたり!ですねぇ」
「昔は景気も良かったし、見栄も有って高いの揃えたけど、最近はパッタリさ・・・」
「あの・・・この中に使っていない物も結構在りそうですね」
「そうなんだよ!それぞれに良い所有るし思い出もあるから、こんなに増えちゃった」
「とは言え、万年控えの選手は気の毒です・・・活躍の場に出してあげたい」
「痛っ!(笑)・・・いやぁ~でも、この際だから思い切って嫁に出すか」
彼が踏ん切りを付けてくれた為、見積書の下段には下取分の銘品が幾つも並んだ。
(それにしても・・・高額下取品が有ると差額は少なくて済むもんだなぁ~)
私は、その見積書を1枚プリントアウトして木島さんに手渡した。
「この差額なら何とか成りそうだが・・・本当に我が家で上手く鳴ってくれるかなぁ~?」
そんな心配をされるのも無理の無い事だろう・・・何しろ彼の自宅のメインスピーカーシステムは当時300万円程の超高額品。ともあれ、彼の腑に落ちてない顔色は見て取れたので、百聞は一見に・・・いや『一聴』に如かずとばかりに、デモンストレーションの準備にかかった。
「まずは、大ホールで収録された自然な響きの有る合唱曲を・・・」
そう言って私はヘンデルのメサイアをCDプレーヤーに準備。アンプのヴォリュームつまみを少しだけ上げて、わざと小さ目に再生した。
「おっ、こんな小音量でも余韻が綺麗に聞き取れるぞ」木島さんの眼つきが変わったのが判った。
次に彼はリスニングチェアで組んでいた足を解き、すっくと立ち上がりDEMO中のホーン型3wayセットアップシステムに近付くと、両手であちこち触れ始めた。
(いったい何をしとるのか、このオイチャン?さては・・・)
「スピーカー本体から響きは伝わって来ないな・・・。臨場感の良さは部屋のせいか?」
(はぁ~ やっぱ、そう来たか・・・)
『臨場感溢れる再生音はシステムと部屋で構築~完成させるもの』と思い込んでいる人は意外と多い。これは、一部のスピーカーメーカーの発言やオーディオ関連雑誌で『リスニングルームは、デッド(響きの残らない環境)より、ややライヴ(響きや余韻が感じられる様な部屋)が望ましい』との表記が見受けられるからであろう。
しかし、ここで冷静に『臨場感とは何か?』を問い質して欲しい。
『あたかもその現場に居合わせたが如く・・・』が本来の意味ゆえ、オーディオを再生する部屋の広さに関わらず臨場感溢れる音表現は再生出来るはずだ。
つまり、広いホールや教会等で収録された音楽は、6畳の和室であろうと広い空間の印象が聞いて取れなくてはならないし、逆に20~30畳(32.4~48.6㎡)フローリングの広いリスニングルームであろうと、天井のスポットライトが頭にぶつかりそうな狭いライヴハウスでの収録物らしい窮屈な感じを表現出来なくてはいかん訳だ! ・・・って言うか、そんな風に再現され 聞こえてこそ『臨場感の再現』と呼べるんじゃなかろうか。
-------------------- はたして・・・ 再生装置の何が『臨場感』を・・・ 続く
【 2012.07.19 改訂版 】
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