ユニットセットアップ・スピーカーシステムのすすめ 第2話~聴き疲れるとは(後編)~

2008年1月1日

 

【 ユニットセットアップ・スピーカーシステムのすすめ 】

                       audio union町田店 西村 巧

 

第二話  『 聴き疲れるとは?(後編)

 

  ---------- 続き・・・ 今回の核心:『歪』が『聴き疲れ』を生む理由 ----------

 

何故『歪』が多いと人間は『聴き疲れ』するのか?この症状は、実は聴き方・・・と言うか、聴く姿勢にも大きく関わるポイントなので、先に『カクテルパーティー効果』について説明しよう(音響工学発祥の地である米国音響学会が、人間の聴覚能力について述べた中に紹介されている『 Cocktail Party Effect 』から抜粋)。

『・・・ 聴覚器官(処理能力を含む)にはマイクロフォンと違って、様々な種類の音が複雑に混じりあっている中から、特定の音()だけを拾って聞き取る能力(音質フィルター)を備えている事が多く、哺乳類等 高等動物の・・・』

→ つまり、騒がしい居酒屋の中に居ても自分の聞き取りたい声だけを選択して聞き取れる( 周囲の喧噪にあっても、自分の悪口だけは聞こえる・・・地獄耳?)。そう言えば・・・家のカミさんも新生児室からの沢山の泣き声の中から、自分の子の泣き声を聞き取って、様子を見に行ってたなぁ~。

 

間近でブラバンやオーケストラの生音、或いは大合唱を聴く時・・・その音圧レベルは100ホンを超える。もの凄い大音量ではあるが、演奏が上手い程に すんなりと耳に心地良く『うるさい』とは感じないものだ。

ところが、小型ラジオやTVのヴォリュームをフルに上げたらどうだろう。検出される音圧は決して大きくないが、感覚的には『うるさくてたまらない』為に、聴いていられない。

どうやら人間にとっての『耳障りな(うるさ)さ』は音量に因るものでは無く、歪率に関わっていると確信出来る・・・『歪』が多い程『煩く』感じるって訳だ。

 

市街地を走行中の車載TV映像を観ていると、変形・変色・ノイズ・ゴーストと様々な悪影響から画像が乱れ、とても目が疲れる。自分自身が揺れている事もあって、眼球の制御と、目からの映像情報を脳の中で補正し続けなければならないからだ。

耳からの情報・・・音とて同じ事。オーディオ装置で音楽を再生した時、記録物の中の元音に混じって様々な歪や付帯音も同時に聞こえる。戸越さんの様に元音を正しく聞き取ろうとすればするほど、脳の中で補正回路がフル稼働し通し・・・だから疲れるんです。

 

「ひとつだけ見つけましたよ・・・良いスピーカー」私が呟く様に言うと、彼は身を乗り出し目を輝かせながら、堰を切った様に質問してきた。

「やっぱりスピーカーか!それ、どこのメーカー? 置くに良いサイズ? 木目が生かされたデザイン? まずもって、それはClassicに向いてるってヤツだよね?」

「はい・・・いや、イイエ!楽曲に偏ったモノでは無く、オールジャンルOKなモノです」

「楽曲を選ばずに『何でも鳴らせるシステム』が有るなんて すごいなぁ~」

「それどころか録音年代も問いません・・・って言うか、本来その様なものは問われるべきものでは無いはず・・・」

「理想的にはそうかも知らんけど、今までそんなの聴いたことが無いもんで・・・」

「戸越さんの言う通り、今現在入手可能な既製品には 殆ど期待できないんで、こちらでOne System作ります」

「作る!?・・・ union オリジナルSP.システムって事か?」

「・・・と云うより『One’s one』つまり、お客様が作るシステムです」

「お客・・・俺が? そんな技量は持ち合わせてい・・・」

「それはこちらの仕事です!私からその仕事を奪わないで下さい()

「・・・で、俺は何をすれば良いの?」

「勿論そのシステムのオーナーな訳ですから、要望を下さい。例えて云えば・・・注文住宅みたいなモノです」

「ははぁ~なるほど!大きさや色・デザインを選べるって事だ!」

「とは云っても、システム構成されるユニットに制限されますけどね」

 

私はそんな会話をしながら彼の期待に応えるべく、PCに向かい ざっと見積もりを打ち込み始めた。ポイントは『許容サイズ・木目の生かされたデザイン・日頃の小音量は基よりClassicの大編成をそれなりの音量で聴いても歪まない事』等だが、ちと金額的にどうかなぁ~と思いつつ1枚プリントアウトして戸越さんに手渡した。

その内容に目を通した彼は「これじゃあイメージが湧かないなぁ~ 絵に描いて!」と見積書を裏返して白い面を私の前に差し出した。

我侭なんだからもぉ~とか 思ったが、口には出さずに受け取ると

「我侭なオッサンで悪いネェ~(笑)でも完成予想図は見たいよ!」と戸越さん。

私とした事が・・・面倒くささが、顔に出ていたらしい(苦笑)。気を取り直してペンを取り、フリーハンドで完成予想をイラストにして、彼に見せた。

「おぉ~上手いもんですねぇ~」

「いや・・・あの、スタイルや構成の方を」

「そっちか、そっちは描いてくれている途中で気に入ったから・・・良いよこれで」

「・・・」

「あっ、それからBOXの木目は濃い色の渋いヤツね!サランネットは付いてるの?」

「はい、本体の仕上げに合わせて こげ茶色のグリルを用意してますが・・・」

OK!注文してからどれ位かかる?」

45週間程・・・あの、金額的にはこれで・・・」

120万円で世界に一つしか無いお気に入りのスピーカーなんて願っても無いね!」

「カシコマリマシタ!!」

 

特注のエンクロージュアが届き、早速ユニットを組み付けた。ネットワークを接続し、音出し・・・チェック完了! 戸越さんにDEMOが可能になった事を連絡すると、翌日の仕事帰りにCD23枚持って立ち寄ってくれた。

「楽しみにしてましたよ!今日は残業 蹴って来たんだ」

 

メデタく その週末に下取分の引き上げと特注製作3WAYシステムの納品決定!・・・(^^)

 

そう、ユニットセットアップ・スピーカーシステムは長時間聴き続けても、ちょいと音量を上げても『聴き疲れ』が無・・・いや、少ない。一般的なシステムと比較すると中高音域にホーン型トランスデューサーを採用する事で『歪を少なく抑えられる』・・・と言う訳。

 

     全てのホーン型トランスデューサーが上記特質を持ち合わせている・・・

とは限らないので、誤解無き様 宜しくお願い致します・・・と、以上。

 

 

2012.06.13 改訂版

2008年1月1日
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