ユニットセットアップ・スピーカーシステムのすすめ 番外編~JBL"075"ツィーター~

2003年1月1日

 

【 ユニットセットアップ・スピーカーシステムのすすめ 】

                       audio union 町田店 西村 巧

 

番外編  『 鏡面研磨の075

 
今回の掲載写真は言わずと知れた『JBL075』(SP.システム・セットアップの際、頻繁に依頼を受ける鏡面研磨仕上げの例)。


未研磨品   研磨済品
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※左右の075はそれぞれ別の個体です。
左側は075の中でも一番新しい仕様のモデル、右側は075の中でも一番古い仕様のモデルです。


ツィーターのホーン部、オリジナルは粗いヘアーライン仕上げの為、経過年数を考えても錆が侵攻している場合が多い。見た目に良くないばかりか、実は音にも悪影響が有るらしい・・・。

 そもそも何故メーカーは[ ヘアーライン ]に仕上げるのか・・・?

キャスト屋(鋳造系事業所)さんに勤めている方々はご存知の通り、型抜き後の鋳造物は型割りの筋模様や型同士の噛み合わせの悪さや磨耗から隙間が生まれ・・・バリが出来たり、金属が均質に固まらなかった時の微妙な凹凸と縞模様・・・まぁ~見た目が汚い!

 何れにしても金属の膨張/収縮率を考慮し、やや大きめに作製する。流し込んだ金属が冷え固まった頃合で型を割って抜き出し、鋳造物が充分に冷えてからバリを取り、規定のサイズに切削加工を施す訳だが・・・製品として見た目が悪いのは避けたいので、ヘアーラインは常套手段って事。

 設計のオリジナルは、あくまでも連続した面であり、細かい凹凸(ヘアーライン)を付けろという指示はしていない。削り物と違って、型抜き物は同じものを大量に作れるメリットは有るが、材質の制限や製作精度・強度の点では劣ってしまう。

故にヘアーラインは、仕上がりを美しく見せる為の [ 製造工程上の対策 ] 以外のナニモノでも無い。

さて、シンバルを叩いた時の音が『ガシーーン』と聞こえる 075だが、鏡面研磨を施すことによって『パシィ~~ン』に変わるし、ヴォーカルの『サ行』もキツさが取れる。

殆どの人が「075って、こんな丁寧な音楽表現出来たっけ?」と耳を疑う。また、「鋳物なのに、ここまで磨けるモノなのか?」と仕上げの美しさに感心する方も・・・。

075の癖』は『音楽表現上の荒っぽさ』なんで、その『癖』を取り去ってあげると、自然な表情になる。何しろ設計のベースは『ベル研究所』・・・理想的なエクスポネンシャルな訳ですから悪いはずが無い。

 

※『鏡面研磨仕上げ』は決して特殊な加工では無いが、注意点は多々有り。設計の意図を理解せずして、着手するなかれ(下手にやると返ってF特が劣化するので、注意されたし)

本当に神経を使って磨いている箇所は、メカニカル・イコライザー部分なんですが、表面からは見えないんだなぁコレが・・・残念な事に。



カクシテ設計オリジナルに忠実な『075』が完成する訳ですよ・・・恐るべしその実力。それと・・・ダイアフラムは、フラットエッジタイプが良かったですね。

075』と云っても初期型は1955年頃の馬蹄型フランジ(16Ω)から、延々と生産され続け、復刻D-44000WXAParagon(1987 生産完了)の角型フランジ(8Ω)丸エンブレムタイプ迄、実に30年間以上・・・。

生産途中[端子][バッフル取付フランジ][エンブレム][外部塗装]等の目に見えるところ意外にも[ヴォイスコイル][ダイアフラム(振動板)][プレート][ポールピース][電極部][絶縁ワッシャー]等、予告無き仕様変更も多々有った。

私の知る限り振動板は4種類かなぁ~、この音色の違いがデカいんですよ!当たり前ですが・・・。

「あっ、お客さん・・・今日は良い075入ったよ!」

 

 

【 2012.04.05 改訂版 】

2003年1月1日
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