ユニットセットアップ・スピーカーシステムのすすめ 第4話~ダイナミックレンジとは~

2005年1月1日

【 ユニットセットアップ・スピーカーシステムのすすめ 】

                       audio union 町田店 西村 巧

 

第四話  『 ダイナミックレンジとは

 

 ---------- 生き生きとした躍動感・・・ダイナミズム

それは、アーティスト・ミュージシャン達の言葉かも知れない ----------

 

今回はダイナミックレンジ[ Dynamic range ]について話を進めよう!・・・っと、その前に、何故Home Audio機器選びに於いてスピーカーシステムの選択が、その優先順位の1番に上げられるのか? それは、映像表現に置き換えれば簡単に解る ⇒より自然な色彩や明るさを求めてHi-Visionまで辿り着いた今だからこそ明確だ!

Audio Systemのスピーカーとは、映像ディスプレイ(カラーモニター)の役割と同じ・・・手段こそ違え、最終的に表現する部分に違いは無い。Hi-Vision撮影された高画質映像は、Full Spec.Hi-Visionモニターでこそ甦るのであって、小型の液晶ディスプレイでは表現し切れない・・・と言う例えと一緒だろう。

大概のSP.システムは、音源の再生機器(CDプレーヤー等)や増幅器(アンプ類)と比較しても、入力に対する出力の正確さが得られ無い・・・悪く言えば、SP.なんてぇ~モノは、アンプからの命令(電気信号)通りに動くモノでは無い!・・・と言う事。

先ずは入力信号(波形)通り瞬時に音が立ち上がらないし、信号が止んでも直には音が切れない(消えない)。専門的に言い換えると『過渡応答特性』が悪い。

そして、アンプからの指示以外の余計な仕事も始める。何故 頼まれてもいない動きをするのか・・・は、第二話で紹介したのでこの場では割愛するが、周波数や音量で様々な付帯音を出して来る始末。 更に、エネルギー変換効率(能率)も低いモノが多い・・・これは、入力されたエネルギー(アンプからの電流信号)に対して、出力されるエネルギー(SP.音量)が極端に小さくなると言う現実。カタログ等DATA内に見る『出力音圧レベル(SPL)』がそれに当たる。 ん?音として変換出来なかったエネルギーは、いったい何処に消えたのか・・・はい、ご想像の通り『熱』になって逃げて行ってしまう。

しかしなぁ~殆どのSP.が蒸気機関車以下の効率って事らしいし・・・これも地球温暖化の一要因となって・・・いやいや要因と呼ぶほどの大袈裟な話では無いにせよSP.として敏感に反応せず『無駄』と思える様なエネルギーを沢山送ってあげないと仕事をしてくれない鈍感な対象(燃費が悪い・大飯食らい扱い)、エコや省エネが叫ばれている昨今ならば、もうちょっと改善して欲しいものだ・・・ブツブツ。(脱線)

 基! ダイナミックレンジとは『信号量の再現能力域を表す数値:増幅回路等で、扱う事の出来る最大信号と最小信号との大きさの比率をデシベル(dB)単位で表したもの』故に、再生上限界から雑音を差引いたものと考える事もできる。先程の映像に例えると、深い[]~何処まで眩しい[]が表現出来るか・・・と言う明るさの範囲みたいなもので、数値が大きい程 優位なのだが・・・落とし穴も有る。

SP.に仕事をさせる為のアンプ等、スペックでは同じ80dB(10000)の表記でも、用途別にレンジの設定が異なるので要注意。 S.R.(P.A.)システム用のAMP.は、一般家庭用のそれと比べて、明らかに内部雑音は多いので、無音状態でもSP.から『サー』ノイズが聴いて取れる。しかも小型軽量化を図る為、本体の発熱を効率良く冷却する為のファンまで付いていたりするから、『ウゥ~ン』というモーター音や『フゥ~』という風切音までも発生する。しかし、増幅の上限界を大きく引上げる事でダイナミックレンジを確保している。

ライブ会場の設備・・・業務用空調システム等のノイズも大きいが、それ以上に聴衆のざわめきが大きい為、音響設備の雑音は気にならないという訳だ。

逆に、ホームオーディオに於いて大音量は不要。電話やインターホンが鳴ったら気付く位の・・・かつ、近所迷惑にならない程度でしか再生しないのが一般的なので、AMP.メーカー側も上限界より下限界(内部雑音)を下げる事でレンジを保っている。まして、再生環境が静かな場合が多く、アンプからの雑音は低いに越した事は無い。

要するにSP.のダイナミックレンジは、使用する条件下での要求に見合った下(微小音量再生限界)~上(振動板の振幅限界)までの再生音量幅を確保すれば良い。

さて、本題に入るとしましょうか・・・。

ダイレクト・ラジエーター型 ( 振動板が剥き出しになっている事から『直接放射型』とも呼ばれる)よりも、ホーン型トランスデューサーの方が『ダイナミックレンジ』が広い理由をちょいと・・・。

再生下限界(微小音量)については前回の『臨場感・・・』の所で説明したので、今回は再生上限界(最大音圧)で何がどーなっているのか紐解いてみるとしよう。

今程『一般家庭内で大音量は・・・』と発言しておいて、大音量の話?と思わないで欲しい。お気付きの方も居られると思うが、平均再生音圧(音量)が小さくても、各種打楽器や撥弦楽器(ギター・ハープ等)・打弦楽器(ピアノ等)は、一瞬の大音量を持つ。これは アタック音とも呼ばれ、音波の頭・・・ピークの事だ。これが正しく再生されてこそ生々しさが甦る。

 

今回登場の横川さん(仮名)はプロのベーシスト(スタジオミュージシャン)。自宅の一部を大掛かりに改装し、プライベート・スタジオを作るとの事らしい(録音関係の仕事をしている友人からの紹介)。

「横川さん!お待ちしておりました。モニターSP.の相談でしたね」

「あっ!髭で判らなかったけど、数年前に新宿の店で会ってますね」

「えぇ、その当時は新宿店に勤務していましたから・・・お久しぶりで御座います」

「という事は・・・あの時、新宿の店で鳴ってた3wayスピーカーって」

「はい、私がUNITを組んで作ったモノです」

「そうだったんですか!それなら話が早い!要するにあんな感じでスリムに()

そう言って彼はスタジオの平図面を広げて向きを変え、私の前に差し出した。

「プライベートスタジオの割には広いじゃないですか!大型SP.も余裕で置けそうな・・・」

「それが・・・ミニコン(ミニ・コンサート・グランド・ピアノ)と太鼓(ドラムセット)を入れる話になってるんで・・・」と頭をかく彼に

「せめてアップライトだったら・・・。まぁ~小型化に向けてトライしてみますよ」と私。

横川さんの要望から判断し、高さ制限は天井以下ならOKだが 48cm奥行56cm以内でありながら、φ38cmウーファーを使った3wayを作成する事となったのだ。

 数日後、設計図面と見積書をFaxした後に電話やメールでやり取りし、特注製作エンクロージュアとネットワークを発注、6週間後に完成し、UNITの組付けに取り掛かった。

10時間のエイジング(鳴らし込み)を行い、横川さんに完成の報告をしたところ、翌日に早速ご来店・・・じっくりと試聴して頂いた。

「箱の小ささから、低い方が上手く出せないんじゃ?と心配してた程じゃ無いですね! あっ、ひどいエンディング・・・フェーダー落とすの早いよ!」急に彼が大声を上げた。

「どうかされました?」

「いや今迄気付かなかったんだけど、今の曲・・・余韻が残ってるのにスカッと絞られてる」

「その先にノイズでも有ったんですかねぇ~」

「そっか・・・でも、ここまで聞き取れるってのは逆に凄い事だなぁ~。そうだ!サンプルテイクを聞かせて貰おう」そう言って彼はカバンの中からCD-Rを取り出した。

私は横川さんからそれを受け取り、先程と同様のシステムで再生した。3分程度の短い一曲が終わって、また同じ曲が流れたが、CDプレーヤーのディスプレイは『Tr.2』を表示していた。

「おぉ~こうこなくっちゃ!」興奮気味の横川さんは、私の方に振り向くと

1曲目との違いは何でしょう?」と悪戯っぽく質問してきた。

げっ!もっとしっかり聴いておくんだった・・・と後悔したが、2曲目の方がベース音に張りが有り、スッキリとした切れ味が音程をはっきりとさせている印象が有ったので

「楽器を替えてないならマイク・・・いや、弦を新しくしたとか・・・」と返すと

「そぉ~なのよ、新しい弦に張替えて録り直したんよ!んじゃ、次は声を・・・」

そう言って彼は別のCD-Rを取り出し、私に差し出した。3040秒位再生しては飛ばしながら数曲聴き終えて

「声はやや太めになる傾向は有るけど、嫌味は無いな・・・。前の曲のウィンドベルは綺麗に出てたねぇ~。何よりアコギ(Acoustic Guitar)の切れやスネア(Snare Drum)の抜けは、やっぱりホーンにした甲斐が有りましたねぇ~OK!搬入の日取りを決めましょう」

 ってな訳で彼 横川氏が言った通り、ホーン型SP.の特質とも云うべき『アタック音の正確さ(俊敏な応答と瞬間的な大音量)』が表現出来るので、他方式のトランスデュサーでは得られない『生楽器の鮮度(リアル感)』が魅力なんです。

--------------------  To be continued(続く)・・・が、次回は テーマが変わる ---------------

2005年1月1日
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